太陽光発電システムの遠隔監視で発電ロスを減らし、保守作業も効率化 株式会社ニプロン様太陽光発電システムの遠隔監視で発電ロスを減らし、保守作業も効率化 株式会社ニプロン様

お客様の課題

  • ●太陽光発電所で発電能力低下などの不具合が生じたとき、技術者が現地へ行くまで原因がわからないという状況では、発電ロスが大きく、保守作業にも手間がかかる。
  • ●発電パネルおよび同社製品・PVマキシマイザーの稼働情報をリアルタイムにモニタリングしたい。
  • ●発電情報、気象情報、発電パネルの自己診断情報をリアルタイム監視して、現地へ行く前に不具合の原因を診断したい。

導入のポイント( ソリューション)

  • ●初めてのIoTプロジェクトを早期立ち上げしたい。「Toami」の開発スピードを評価した。
  • ●稼働開始後は、自分で改変しながら、診断の精度を高めていきたい。画面や機能を自分で改変できる唯一のクラウドサービスが「Toami」だった。
  • ●NSWへの依頼開発によるスモールスタートと、稼働開始後の自主開発を柔軟に組み合わせられる。

導入効果

  • ●リアルタイム監視のデータを使って、不具合の原因を事前に診断。現場作業が効率化でき、保守作業のためのシステム停止時間も短縮。
  • ●大規模な計測データを総合的に分析できるようになり、分析精度が向上。
  • ●発電ロスを減らし、太陽光発電事業者の売上増大に貢献する装置として、PVマキシマイザーの他社差別化が強化できた。

PVマキシマイザーの収集情報リアルタイム監視で

 兵庫県尼崎市に本社・工場を置くニプロンは、スイッチング電源、およびパソコン用ノンストップ電源の開発・製造・販売で、創業以来約50年の実績を積んできた。

 2010年には、グリーンパワー領域へと事業を拡大した。この新事業の中核製品が、太陽光発電の最適制御を行う「PVマキシマイザー」である。

 太陽光発電では、影・付着物・劣化などの原因で太陽光パネルの発電パワーが低下すると、入力電圧の不揃いを避けるため、「ストリング」と呼ばれるグループ単位で最大電力点の電圧に入力電圧を等しく調整する。たとえば、50%のパワーしか出せないパネルを含むストリングが1本発生すると、本来発電できる発電量に対して、1パネル50%の発電ロスに留まらず、ストリング1本分の発電ができなくなることがある。なおストリングとは、パネル14~16枚をグループ化した管理単位である。

 ところがPVマキシマイザーを接続すると、発電量が落ちたストリングを昇圧してストリング間の電圧差をなくすことができるため、発電可能なパネルから最大限の電力を取り出すことができる。

 「PVマキシマイザーは、発電ロスを排除しつつ、安定した入力電圧を継続的に供給して、太陽光発電事業者の売上増大に貢献する装置なのです」と、研究開発統括本部 デジタル開発部 システム開発課 課長の佐野章治氏は語る。

 しかし、発電能力が低下するなどの不具合が生じたとき、ニプロンの技術者が現場に駆けつけて行う検査は、非常に労力を要する作業である。

 「まずパネルが断線しているかどうかを目でチェックした後、ストリング単位で順に稼働を止め、検査機に接続して問題がどこに生じているかを探していきます。たとえば2メガワット級の発電現場ならストリング500本程度が設置されています。この膨大な数の発電パネルをくまなく検査して、不具合の原因を切り分け、修理・調整しなければなりません」と佐野氏。

 PVマキシマイザーは、発電パネルの稼働データを収集し、記録する機能を備えている。したがってこのデータをリアルタイムにモニタリングすることができれば、現地へ行く前に不具合の原因を診断することが可能だ。現場作業は効率よくなり、必要な交換部品をあらかじめ持参することもできる。さらには、発電パネルの故障予兆を早めに捉え、完全停止する前に事前対策を講じることも可能になる。

 発電パネルおよびPVマキシマイザーの安定稼働実現を目指して、2015年7月、PV遠隔監視システム開発がスタートした。

依頼開発と自前開発を柔軟に組み合わせることができるのは「Toami」だけだった

 開発にあたっては、日本全国の太陽光発電所に散在するPVマキシマイザーをインターネット経由でクラウドにつなぐことにした。クラウドを使えば、発電事業者とニプロンがともにリアルタイム監視を行える。

 接続するクラウドはどれが適しているか、5~6社のサービスを検討した。その結果、ニーズにぴったり適合したのが、NSWのIoTクラウドプラットフォーム「Toami」である。

 「Toami」は、豊富に用意されている部品(ウィジェット)をドラッグ&ドロップしながらノンプログラミング開発するプラットフォームであるため、開発スピードが非常に速い。ニプロンは実証実験システムを構築したが、第1バージョンはわずか3カ月で構築できた。

 「さらに重要なポイントは、『Toami』だけが、われわれ自身で画面修正や設定変更ができる開発プラットフォームであったことです。『Toami』以外はすべて、仕様をベンダーへ伝え、開発を依頼するしくみでした」と佐野氏。

写真(佐野 章治氏)

株式会社ニプロン
研究開発統括本部
デジタル開発部
システム開発課
課長
佐野 章治

 発電能力を左右する環境変動のファクタは、拠点特性、季節変動などたくさんある。ニプロンは、独自の公式を作り、現場のデータをフィードバックしながら診断精度をブラッシュアップしてきたが、今後も試行錯誤は続く。

 「何度もアプローチを変え、何度もシステムを作り替えることを考えると、『Toami』が最良の選択肢でした。画面はガジェットを動かしてJavaScriptを足せば修正できますし、その他の設定も容易に改変できます。スモールスタートでいったん全体を構築してもらい、そのあと構築されたプログラムを自分たちで明確に理解して開発を継続していけるのは『Toami』だけでした」と佐野氏は語る。

 開発コストも安くなる。3年間使い続けると、1つ1つ開発を依頼しなければならない他のサービスに比べて、開発コスト累積が3割以上安くなる見込みである。

遠隔監視システム構成「PVGuardmyan(R)」のイメージ図

中規模発電事業者の年間売上が発電ロス低減効果で「350万円向上」と試算

 PV遠隔監視システムの監視内容は、太陽光パネルの出力電圧・電力・IV特性カーブなどの発電情報、気温・日射量などの環境情報、電源過熱などの自己診断情報の3本柱である。

 特に、出力電圧・電流などの一般的な発電情報だけでなく、PVマキシマイザーが検査を自動実行して得られるIV特性カーブの情報を常時取得することができるようにしたことで、診断精度は大きく向上した。

 現地作業も大きく効率化できた。技術者が現地へ行っても不具合原因を特定できないという「駆けつけロス」はなくなり、検査のために発電を停止する時間も短縮できた。

 「つまり、発電ロスを大きく低減できることが実証できたのです。たとえば、2メガワット級の中規模太陽光発電施設で、電気の売価価格を40円と仮定すると、年間売上を350万円向上させられます」と佐野氏は試算結果を示す。

「ToamiAnalytics」を活用したビッグデータ解析も計画中

 次の課題は、診断自動化、AI化である。まずは2017年7月、自動診断できる新バージョンを稼働開始する。人手作業よりも解析漏れがなくなり、診断精度は間違いなく向上するという。

 「『Toami』と連携するIoT向けビッグデータ分析・予測サービス『ToamiAnalytics』も利用したい。すでに人の力で診断誤差を±0. 3%まで高めましたが、これはTypical 値(標準値)であって、突発的に大きな変動が発生するのを捉えきれていません。『ToamiAnalytics』の機械学習機能により、これまで蓄積した発電情報、気象情報、自己診断結果から、新たなアルゴリズムを自動生成してくれれば、診断自動化、精度向上にもたらす効果はきわめて大きい」と佐野氏は期待を語る。

 ニプロンは、PV遠隔監視システムを「PVGuardmyan(R)」と命名、市販に向けて大きく動き始めている。

 「IV特性カーブを取得できるようにしたことで、より高精度な発電最適化が可能になりましたから、他社製品との差別化にもつながります」と佐野氏は抱負を語る。ユーザ自身で試行錯誤を重ねることができるプラットフォーム「Toami」は、ニプロン独自のノウハウを蓄積し、高めていく基盤にもなっているのである。

※記載されている会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。記載事項は2017年4月現在のものです。記載されている情報は取材時におけるものであり、閲覧される時点で変更されている可能性があります。予めご了承下さい。

ユーザープロフィール

株式会社ニプロン

株式会社ニプロン(本記事ではニプロンと表記)は、多種多様な自社製品を2系統に分けて捉えている。ひとつは、コンピュータCPUなどに用いられる「頭脳電源」。この分野では、ノンストップ電源で特許を取得している。もうひとつは、大容量な動力用の「手足電源」。この分野では、多重ブースター方式超高効率DC-DCコンバータを開発して国際的に数々の特許を取得した。PVマキシマイザーも、25年以上の長寿命を誇る昇圧用DC-DCコンバータを中核にした製品だ。

製品2系統に共通するのは、「護る」をコンセプトとして、高品質・高信頼性・高付加価値・長寿命を追求してきたことである。

1967年創業、1981年会社設立のニプロンは、2016年6月期の年商が45億1,000万円であるが、2020年に「100億円企業」、「株式上場」という大目標を達成するため、社員一丸となって躍進を続けている。

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